醒めない夢





あの日もこんな風に

雨が降っていた




「すげぇ雨だな」

窓を激しく叩く音に机に向かっていた丹羽は勉強の手を休めて意識をそちらへやる。

午前十時頃から降り出した雨は、その勢いを殺すどころか更に激しさを増しているようだ。

時計を見遣れば、針は午前一時を指している。

既に3時間も降り続けていた。

椅子から立ち上がり、軽く背伸びをする。

別段することも無くて数学の問題を解いていたのだが、その問題が意外に難しくて少々時間を費やしすぎてしまった。

「・・・・・・ヒデはまだ、帰っていないんだな」

物音一つしない隣の部屋に苦笑が洩れる。

今日は確か、寮長の目を盗んで外の世界に出かけているはずだ。

一つの枠に大人しく収まっていないのは自分も一緒だが、その頻度は明らかに中嶋の方が多かった。

何処に行っていると話は聞かない。

聞いても無駄なのだ。

行く場所は決まっていた。

何より、丹羽の恋人じゃない。

彼が干渉できる権利など全くなかった。

「ま、別に良いけどよ」

誰に言い訳するでもなく自分に言い聞かせるようにそう独りごちて丹羽は着ていたシャツを脱ぎ捨てる。

そしてパジャマ代わりのTシャツを着込むと、部屋に戻るなりさっさと抜き取っていた床に落ちたネクタイを拾い上げた。

中嶋がいたなら「外したら決まった場所に掛けておけ」と文句を言いながらハンガーに掛けてくれる所だが。

今、この部屋に彼はいない。

そんな事実が何故だか無性に耐えられなくて、丹羽は備え付けの冷蔵庫を開けると

こっそり忍ばせてある缶ビールを取りプルタブを引いた。

一口飲み干せばビール特有のすっきりとした苦味が喉を通り、荒らぐ心を静めていく。

何をやっているのだろうか。

一度気になってしまえば、あとはどれだけ足掻こうとも意識は中嶋だけに向いてしまう。

未だ帰ってきた様子を見せない隣の部屋に、うろうろと部屋の中を歩きながら天井を睨みつけた。

抱きたい。

己の楔を彼の中に埋めて無性に腰を振りたくって、

中嶋のあられもない姿をこの目で見たかった。

コンコン。

不意に静寂をドアをノックするやや硬い音が破り捨てていく。

形式ばった、けれども遠慮という文字の無いノックの仕方は、他でもない中嶋のものだった。

丹羽の足がドアに向かう。

向こう側に声を掛けるでもなく勢いよくドアを開くとそこには。

予想と違わず彼の姿があった。

「どうしたんだよ。こんな夜更けに」

「別に。ただお前のことを思い出しただけだ」

一人での外出時にかけている物なのだろう。

彼の瞳の色を若干濃くしたプラスチック製でフルリムの見慣れない眼鏡を掛けた中嶋は

丹羽の答えを適当な言葉ではぐらかして邪魔すると言う言葉もなく、

ズカズカと中に入ると黙ったまま丹羽の顔をじっと見つめた。

雨が、降っている。

土砂降りの様子は変わらずに雨が窓を激しく叩いていた。

「傘を忘れてしまって、走って帰ってきたんだ」

冷えてしまった

濡れた髪をかき上げて中嶋がそう呟く。

やけに静かな部屋の中の、蛍光灯の下。

張り付いたシャツがやけに生々しく丹羽を誘った。

「温めてくれよ」

口を閉ざしたままの丹羽に中嶋が微笑を浮かべながら強請るように囁いた。

そうして長い足でドアの前に立ったままの丹羽の傍に行くとするりと首に腕を巻きつける。

冷たい肌が首筋に触れ、丹羽を誘う。

「な?哲也」

猫のようにしなだれかかると丹羽の耳元で中嶋がはっきりと意図を持った口調で囁いた。

淫靡な音に部屋の空気が震える。

「ったく。俺は寝るとこだったんだぜ?」

誘う中嶋の視線と仕草に最後の理性まで持っていかれた丹羽は、それでもその本心を告げることなくわざと溜息を吐いて中嶋を見遣る。

そうして冷え切った体を抱き締めるとそのまま熟れた唇に己の唇を触れさせた。





配信元:帝王受同盟様
はい。と言うわけで、ですね。中嶋受け de 3×10のお題 No.6です。
もしかしなくても私、丹羽中を真面目に書いたのはこれで二度目くらいです。少ないです。 更に言ってしまえば丹羽中を単体として扱うのは初めてです。前回は七中前提の丹羽中と言いますか、 セフレとか片思いな英様しか書いておりませんでしたし。気紛れでしゃぶっちゃうんだぞ!(笑)な英様でした。 今回は違いますよ(多分)ちゃんとしたセフレです。そしてお題の中であわよくば続けていきたいなと目論んでおります。 出来るかな・・・・・・いえ、やりますが。英様にはとことん絡んでもらおうと思っております。
勢いだけでこういう事をするから途中でダウンしてしまうのですが。 今回は頑張って書きたいと思います。それにしてもBGMが咎狗って・・・どうなんでしょうか。
◆γуμ‐уд◇

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