光の中には竜型のフラウドと快楽を司る悪魔、ヴェルグの姿があったのだから。 しかし、フラウドの周囲にはまだ悪魔が本来同属を見分けられる為に纏う空気というものはない。 おそらくこの光景はフラウドの記憶なのだろう。 彼が悪魔になる前のもの。 そう解釈してライは中を浮いたまま、静かに流れていく映像を見下ろしていた。 「……、……ぉ」 言葉は良く聞き取れない。 けれども彼らは悪魔について話しているようだった。 薄暗い洞窟の中。 その場所は間違いなく先程迄自分とフラウドが死闘を繰り広げていた場所で。 全てはここから始まっていたのかと、ライは心の中でそう独りごちた。 元魔物の記憶の中は何故だか少しセピア色に染まっている。 そしてその中で、何処か興味のなさそうなフラウドにニヤニヤと意味深長な笑みを浮かべてヴェルグがいくつも言葉を投げかけていた。 どうしてこうも食い下がっているのだろうか。 ライは不思議でならなかった。 ヴェルグにとってフラウドはそれ程の魅力があったのだろうか。 ならば自分はヴェルグに恨まれるだろうとライは苦笑を浮かべた。 いや、今更かとも思う。 元々、彼は猫が嫌いだ。 だから元猫である自分を好ましく思うはずもない。 まぁ、彼に好かれようが嫌われようが、ライにとっては何の関係もない話ではあるが。 それでも。 全く以ってくだらない。 彼らを見下ろしたまま、ライは軽く頭を振り、浮かんできたヴェルグへの疑問を頭の隅へと追いやった。 「……ん?」 何かを発見し、不意にライの動きがゆっくりと止まる。 ヴェルグとフラウドはそれから暫らく話していたが、急にフラウドの頭が上下に振られたのを見たからだ。 悪魔になることを認めたのか。 ライは腕を組んでじっと彼らを見つめていた。 ヴェルグが楽しそうに笑ってからフラウドに更に一言、声を掛けるのが見える。 「…………何?」 そしてヴェルグが姿を消す直前、その僅かな時間に本当に一瞬だがライの方を向いたのを見てしまった。 目を見張り、言葉をなくす。 これはフラウドの記憶なのだ。 ヴェルグがこちらを向くはずないと自分に言い聞かせ、ライは眼を閉じて頭を左右に振る。 長い白髪が闇の中でふわりと舞う。 再び瞼を開けると今度は、姿を消したはずのヴェルグだけがライの目の前にいた。 真っ暗な中、ライの様子を嘲笑うかのようにただ一言。 「悪魔の世界へ、ようこそ……」 と、今度ははっきりとヴェルグの声が聞こえてきた。 「カンゲーするぜ、新しい喜悦の悪魔さんよぉ…」 ゆっくりとヴェルグの躰がライの方へと近づいていく。 先程まで過去の記憶の中で話していたはずの登場人物。 こんなことがあっていいものなのか分からずに、ライは意識の中で耳を動かした。 もちろん既にそんなものは存在していない。 ライの、そしてかつてフラウドだった者の心の記憶でしかないのだ。 それでも、やってしまうのは完全に慣れていない証拠であろう。 状況を上手く把握できずライは眉を思い切り顰めた。 考えをめぐらしても非常識的なこの空間で常識がまかり通るとは思えない。 ならば。 ヴェルグが彼らの思考の中に入り込んできたというのだろうか。 あまりに非現実的な結論に自分で考えておきながら最早ついて行けないと、ライは軽く眩暈を感じていた。 ヨロ、と後ろへ足を踏み出して片手で額を抱え込む。 後ろにも前にも何もない闇のはずなのに後ろへと動かした足からは何かを強かに踏んだ感触が思い出された。 何がどうなっているのか、さっぱり分からなかった。 「っおいおい。まさか、混乱してるってこたぁないよなぁ?……わかってんだろ?自分が、もう猫じゃねぇってことくれぇ」 そんなライの様子を楽しそうに眺めながらヴェルグは嘲笑うかのような口調で話しかける。 そう。猫ではない。 薄々は感じていたものの、こうして第三者に事実を突き付けられるのはあまり気持ちの良いものではなかった。 ライの顔が不快そうに歪む。 その表情を見つめながら快楽の悪魔は、なんだ認めたくなかったのかと更に大声で笑った。 [Odd] 第一章 襲位 一部抜粋 |
このお話はヴェルライ+バルライです。 また、捏造度がかなり高いもので、少々流血も入っております。 苦手な方はご注意ください。 ________________________ |
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