deep breath


砂浜の上、遠くからスニーカーの足跡が

二足続いてた



振り返って思わず写真を撮った



お前は振り返らずに待っていたね



でっかい入道雲を見上げていた



あれは何年前だったか



…お前の言うとおりになったよ。





暗い部屋の隅にいたお前



[闇に溶けてしまいたい]と言った



抱き寄せようとしたら

僕の胸に人差し指の爪を立てて



[服、皮、肉、骨、たくさんの障害があたしを邪魔する]



そう言って泣き崩れた。



[あたしをあなたのここに閉じこめてほしいの]





たしかあれは数年前だ



その次の日、お前の言ったことが解った気がした



たくさんの障害が、僕のナイフを阻んだ



[今、こじ開けてやるよ]

[出たらすぐに僕の中に飛び込めよ]



しかし…叶わなかった。



どこから夢なのかわからないし、

知ろうとも思わないが



ともかく醒めてしまった



あれ以来だね。





あの日のフィルムは無くしたよ



砂浜がみるみる色褪せていくんだ



けど僕の中にはお前がいるみたいに



お前の鼓動が響いているんだ




あの部屋にはまだ闇が集まってくるよ



俺も溶けちまいたい…





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